【カフェ業態を始めた今、考えていること ⑥〜中島みゆき『地上の星』ではないけれど〜】

(つづき)


そもそも、産業の構造とはどうなっているのか。


どんな産業にも、たいてい、業界の「生態系」が存在しているものです。きれいに循環型であるケースもあるのかもしれませんが、事実上はピラミッド型になっていることのほうが多い気がします。食物連鎖型というべきでしょうか。


そして生態系の頂点にいる会社が、一般的に、最も多くを稼ぐようにできています。少なくともその生態系の中で、相対的に最も安定し、最も働きやすく整えられた環境の中で。


生態系の下位にいくほど(業界によってはこの階層がとても深く、広くなっているはずです)、立場は弱くなり、場合によっては労働環境も悪くなり、稼ぎづらい構造になっていく。自動車業界やテレビ業界、IT(システム構築)業界などは、私が自分自身の経験、知見として知っている限りでは、けっこう顕著な気がします。


くどいようですが、私は社会主義者ではないので、こういう構造自体を否定し、みんなフラットにすべきだと主張するつもりは、ありません。


ただ、こういう状況と構造が、厳然としてあるということです。


しかしそれが、です。この未曾有の世界的混乱による、急激な原材料や輸送費等の高騰、人員の不足などによって。


価格交渉権などないと今までされていたような立場の「生態系の層」にも、とうとう、部分的にではあれ、立場を主張し、価格転嫁の議論を持ち出す余地が、生まれることとなったのです。


これは、とても大きな変化です。大きなチャンスかもしれない。


コロナ禍の始まりによって、社会がエッセンシャルワーカーの価値を考えるきっかけが生じたのと、同じように。


結局のところ、日本がずっとデフレ社会のまま、何十年も成長できなかったのは、この産業構造のせいだと、個人的には思っています(「政治構造も」かもしれませんが)。


立場の弱いものが顧みられなくて、気づかれなくて、虐げられて、それが「そういうもんだ」の理屈で通ってしまって。


強い立場にある者が、その立場を無意識に当然のものとして省みることもなくなってしまって、自分の権益を守る仕組みを固持し続けてきて。


(※ついでに言うとこの構造自体は、日本を含む「先進国」とされる国々が、そうでない国に不平等で不公平な条件を飲ませることで、自分たちの経済的発展を享受してきたというかある部分は搾取してきたとすら言えるような種類の進展を遂げてきたことと、同様です。もっとも、その構造をとりながら、停滞し続けていた日本は何をしていたのか、というところですが…)


そのようにして日本は長いこと、「高品質で安い」というラベルを貼り付けたモノやサービスを、後生大事に守ってきました。そのラベルがいつのまにか、実質的にはもはや「安さ」だけしか売りになっていないということに、気づかないまま(「安い」というより「デフレ価格」なだけだったのですが)。


実際私はもはや、日本が世界一みたいにかつて思われていたような、そのように喧伝されてきた製品を、高品質ですらないと思っています。高品質でないというか、いや品質的には高いのかもしれませんが、正確には「高付加価値」な商品ではないと思っています。


さてここまできて、そろそろようやく、結論に近づいてきました。


だいぶ長くなりましたが、この一連の文章の中で私が訴えたいと思っていたのは、端的に言うと、次のことで――


みんなが、社会の中でどういう仕事がどういうふうに関係しあって、我々全体が支えられているのか、それを知ることができるきっかけや情報を、みんなそれぞれで、なるべく意図して増やしていったほうが、よいのではないか――と考えている、ということなのです。


(つづく)


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