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とんかつカンティーヌの、これから~ ⑰「コストパフォーマンス感覚」の地殻変動

(つづき)



ファストフードやラーメン屋など含めて、「家の外で食べる場」を提供する飲食店という、ある意味では市民の日常に関わっている生活インフラの状況は、秋以降、以下のパターンに分かれてくるのではないかと予想しています。あるいは一つの店においても、これらの考え方の、ミックスという形を取るのではないかと思います。



①多くの店は、ある点を境に、必要な幅の値上げに踏み切り始め、現状のサービスレベルを維持する。


②やっぱり客離れが怖い、という思いが強い店は、値上げに踏み切れない。あるいは踏み切ったとしても、小幅にとどまる。


③②の中のいくつかは、利益確保のため、量を減らしたり、食材の質を落としたり、人員配置を減らすなどせざるを得なくなり、結果的にサービス低下につながる。


④利益の維持に充分な、大幅な値上げをあえて決行し、しかもその分だけ同時にサービスレベル、顧客満足度も向上させ、値上がりしてもなお現状以上の納得を得られるサービスを提供し続ける。



お客からの信頼厚く、①のパターンの作戦を取ることができる店であっても、低価格帯の店であればあるほど、「本当に充分な幅の」値上げができるのかどうかは、不透明です。


というのは、前々回の投稿(⑮)で書いたように、この日本の、あまりに長すぎたデフレ生活で固定化されてしまった価格感覚は、そう簡単には変わらないように思われる、つまり「これ以上にしてしまったら、高すぎるでしょ」という天井が、どこかにあるように思われるからです。


税込980円で食べられていた鯖の塩焼定食が1180円になっていたら、さすがにちょっと「うっ」と思う方も多いのではないかと思います。消費者のその感覚を店の店主が危惧するのであれば、「ここはやはり、1080円で、なんとかがんばるしかないか…」となるのです。結果、経営はやはり、苦しいままです。


個人的には、毅然として①の作戦を基本的には取ろう、という気概を持ちつつも、結果として、事実上は②→③に陥ってしまう、というパターンが、多くなりそうな気がしています。

ちなみにいうと、高級レストランの中には、すでに④の作戦に踏み切っている店も、見受けられました。こういう場合、高価格帯なビジネスほど、影響を受けづらいものです。


蛇足な余談ですが、コロナ禍でも富裕層は消費が全く衰えておらず(各国政府のコロナ対策によって、むしろ富裕層の金融資産は大幅に増えたようです)、コロナ前期において消費活動が抑圧されていたぶん、コロナ中期から富裕層、高所得者層向けビジネスは急回復、空前の好景気を迎えています。現時点では、どうやって富裕層向けビジネスで一気に稼ぎを上げるか、ということが、多くの企業の関心事、注力テーマとなっているようです。


さて①〜③のどのパターンであったとしても、消費者にとっては、少なくとも相対的には、サービスレベル、つまりコストパフォーマンスが悪化することになってきます。むろん、「今までの金銭感覚に照らし合わせた考え方における」、コスト(価格)対パフォーマンス、という意味ですが。


過去を振り返って、本当に適正な価格(コスト)は本来、どうあるべきだったのか?という議論は、今からでも、するべきかもしれません。今までが、異常なデフレ社会だったのだと、省みるために。


しかしいずれにしても、今、ここで値上がりした結果の価格が、「これが適正なんだ。これで正しいコストパフォーマンスなんだ。」と感覚的に受け入れられるためには、まだ時間が必要だと思います。


そしてまた繰り返しますが、これは「外食」の場面だけの話では、おそらくありません。


生活に関わるあらゆるモノ、サービス、あらゆる場面で、一般消費者にとっては、こういった「自分の中のコストパフォーマンス感覚が、ざわつく」ような感覚にさらされる日々が、しばらくの間、続く可能性があると思います。


(つづく)

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