当店実は、オミクロン株が落ち着いたら、今度こそカンティーヌ業態(飲食業態)に戻すことを、具体的本格的に計画しよう…と、考えていたところでした。ロシアがウクライナ侵攻を開始するまでは。
今また、これによって先行きが見通せなくなりました。何かというと、これからあらゆる物価がどうなっていくか、見当もつかなくなってしまったためです。そしてそれによって、コロナ後もう一段階、社会のあり方が変わる可能性すらありえる、と今は考えています。
今回この場で、当店の業態の方向性の話とからめて、ご参考情報という意味で、今手元に入っている情報を共有します。
これは取引先(食材の仕入れ先)から入ってきている情報、及びNHKや他国の公共ニュース、各国通信社、日本経済新聞のニュース等をベースに、私が個人的にまとめて解釈して、発信するものです。それ以上の根拠は今のところありませんので、信憑性としてはあくまでご参考程度にとどめておいてください。
ちなみに店主は、SNSから情報収集をするということはしておりません。
公共放送や、明らかに社会的に一定以上の信用を持っている新聞社、通信社等がSNS上でシェアしているニュースを除いて、SNSから流れてくる情報、あるいはネット上のニュース的な情報、ウェブマガジン等が流す情報のほとんどは決して鵜呑みにせず、それをそのままシェアすることや、それを根拠として論理を構築することは、基本的にしていません。
まず、欧州からの空輸便に、大きな変更が起こっています。ロシア上空を飛べないなどの路線の変更や制限によって、一部では運賃が3~5倍になっているという情報があります。
原油価格が高騰していることからも、空輸運賃が今後さらに上がる可能性が見込まれます。
価格高騰を理由に、すでに空輸されるヨーロッパ産品は多くで欠品(取り扱い取りやめ)が生じているようです。欠品していないものも、2~3倍に値上がりしているようです。
これらは業務用の、ある程度高級なレストラン用商材に限られる話かもしれません。少なくとも今のところは。というのは、そういうものを中心に扱っている商社からの情報だからです。
しかし業務用高級食材「だけ」を載せて飛んでいる空輸便がそうたくさんあるとは思えないので、普通に考えれば、ヨーロッパからの空輸系商材すべてに同じような影響が出ているのではないかと思われます。
現状としては、多くの商社や物流企業は、今後の頻繁な価格改定を避けるため、今を持ちこたえながら、ウクライナ情勢や原油価格等の影響範囲がどこまで及ぶか、様子を見つつ、必死で計算をしているところ、と見られるようで、全容は明らかになっていないそうです。しかし現時点においても、現価格のままではどこもかしこも大幅な赤字となることは確かと考えているようです。
ちなみにここまでは「空輸」の話です。巨大なコンテナを積んで大量の物品を運ぶ「海運」に関しては、未だコロナの影響を引きずり、発着が定期的運航に戻っていないものがあるようです。これもいつになったら正常に戻るのかの見通しに関しては、情報が入ってきておりません。当然こちらにも、原油価格の高騰がさらなる影響を及ぼしてくるはずです。
この3〜4月で、消費者に関わる生活用品の値上げが広い範囲で行われましたが、これらの多くは、コロナ禍の結果だと思われます。まだウクライナ情勢は具体的には反映されていないのではないかと私は考えています。
実際、2020年春に始まったコロナ禍が、商材への価格反映という形で影響が出始めたのは、半年〜1年以上が経ったくらいからでした。まず我々業務用食材に影響が出始めました。
そこからさらに半年くらいの間に、主に輸入の肉類、油脂類など、数回にわたって値上げが繰り返されてきました。これは普通には考えられないような頻度と上げ幅となる、異常事態でした。
それがとうとう一般消費者にまで影響が出始めたのが、2022年のこの時期。というわけなので、想定していなかった物流の非常事態が世界規模で発生すると、一般的な消費財に影響が出始めるのにざっくり2年程度はかかると言えるのではないかと思われます。もちろん半導体など、ほかの分野においてはもっと早い段階で致命的な影響が出始めた分野もありましたが。食材は、一旦ブレーキがかかると、そこから持ち直すために、栽培、飼育、という期間が必要となるため、工業製品とは異なる動きをします。(ちなみに牛肉は、一旦生産を減らすと、増産しようとしても、出産〜肥育〜出荷まで、約2年かかります)
今回のウクライナ侵攻に関しては、ヨーロッパ(特にドイツという経済大国)のエネルギーが大幅にしぼられるという、まさに事実上戦時のような事態にこれから見舞われると予想されています。ヨーロッパの経済全体が冷え込む原因となりかねません。
そうなったら、ヨーロッパより一段階遅れて、影響は日本にまで及んでくる可能性があります。
また世界の輸出小麦の3割を占めるというウクライナ、ロシア産の輸出小麦が滞ることで、北部アフリカや中東地域での広範囲にわたって主食が欠乏する可能性が指摘されています。
同様に、両国からの輸出が停滞することで、農作物用の肥料や、畜産用の飼料も不足、高騰するという話もあります。そうすれば多くの食糧価格に影響が出てきます。
世界的に景気が後退すれば、貧困や格差がさらに増大する恐れが出てきます。そうなると、(ここからは完全に私の私見となりますが)世界各地では社会情勢の悪化や治安の悪化につながりかねません。これは極右勢力の台頭や、地政学的なリスクの増大の温床となります。それは過去の人類の歴史を振り返れば、必ず因果関係が見出せます。
まとめると、今起こったウクライナ情勢の影響、これはこれから1年以上数年間くらいにかけて、くすぶり続ける(あるいは悪化の一途をたどる)のではないか、と私は想定しているということです。
加えて言うと、全く別観点になりますが、中国の「ゼロコロナ政策」の破綻による、世界経済の混乱の可能性。これは今年の年初、アメリカの著名な国際政治学者のイアン・ブレマーという人が、「2022年に起こりうる世界的リスク」の一つとして、挙げていたものです。
すなわち、中国でコロナが拡がってしまってとうとうゼロコロナ政策が追いつかなくなって、でも無理やりそれを押し通そうとして、ロックダウンや行動制限を大規模に行いすぎて、2020年コロナ発生時からもほとんど止まらなかった中国の経済活動に、ここにきてとうとう急ブレーキがかかるということです。大型の貨物列車が最高速を目指して加速し続けていたところに、力ずくの急ブレーキをかけるようなものです。そんなことが起きたら、とうとう世界の生産、物流は大混乱に陥ります。これがイアン・ブレマーが挙げた危惧のシナリオでしたが、なんと現在、上海(シャンハイ)で、その予測どおりのことが起こりつつあります。これがここで収まるのか。それとも収まらないのか。
そういうわけで、現在の私の個人的な結論は「これから先、数年単位で、何が起こるか、また全くわからなくなった」ということです。コロナの新しい変異株発生の可能性だってあります。
悲観的すぎるのかもしれませんが、可能性としてはどれも充分ありうることだと思っています。そんなこれからの社会の中で、当店はどういう形になっていくことを考えているのか…引き続き、別の投稿でお知らせします。
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