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2025年 年初の思い ~崖っぷちの2025年

なんとか2025年が明けました。明けないかと思いました。少なくとも店の中にいて2025年が明けるのを迎えられることはないのかもしれないという可能性を、捨てきることはできませんでした。2024年の後半くらいに至っても。つまり2024年のうちに店がなくなっているという可能性が、常に頭の中のどこかにあり続けました。


それくらいギリギリな毎日でした。です。今でも。


資金が減っていく。毎月ガンガン減っていく。無情に。しかしそれは現実。


なんの現実かというと、それは「自分の店には、お客様が来ていない」という現実。


経営を成り立たせるために必要な数のお客様が、来ていない。経営を成り立たせるために必要な数のお客様が来ない店というのが、自分の営んでいる店なのだ。これが現実なのだ。


とにかく、夜が来ない。夜に誰も来ない。全く来ない。誰か一組でもいらっしゃれば、飛び上がって喜びたいくらい、誰も来ない。


そして、「夜に、なぜ誰も来ないのか。」その理由が、因果が、構造が、わかっているような気がする。その仮説が、自分の中にはある。それも、おそらく、確度が高いのではないかと思われる仮説が。


わかっているのに、ではなく、わかっているからこそ、どうしようもない。このままでは。今のままでは。ここまで築き上げてきた、とんかつカンティーヌのポリシーのままでは。


これは全て、自分の判断の、自分のやっていることの、結果なのだ。


そう。全ては、自分の責任。それが、独立し、自分で経営するということ。自分で店をやるということです。


自分の判断は、間違っている。

あるいは少なくとも、店を存続させるほどには、経営を成り立たせることができるほどには、正しくない。正しくないことをやっている。


この命題と葛藤と向き合い続けた、2024年でした。


おそらく…お客様から見たら、外部の第三者から見たら、「そりゃあー間違ってるよ!」と思われる要素は、いくつもある。そのように客観的に認識している自分は、います。しかし問題は、そういうことではなかったのです。


第三者から見える世界と、経営している本人だけにしか見えない世界は、全く異なっているもの。これは自分で独立して初めて、実感としてわかったことです。第三者から見える世界と同じものしか見えていない経営者では、もうその時点で経営者として失格です。経営者は、第三者から見える世界を前提とした上で、且つ自分にしか見えない世界の情報に基づいて、判断を下さなければなりません。


それは時として、第三者の中の誰かにとっては、とんちんかんにしか見えないような判断であることも、ままあります。しかしそれ以外のトータルにとって、マクロにとって、意味のある判断ができるということ。それが、経営として正しい判断である、と言えると思うのです。


という偉そうな前提を置いて、その判断が、自分の場合、間違っている。これを認めなければならない。自己否定が必要だ。しかし、いったいどこから?どこまで巻き戻し、何から否定すべきなのか?


ところが実際、原因は必ずしもそういう「論理」ではなかったりする。というより、個人的な「感情」が血栓となって自然で健全な論理の血流を妨げていて、その結果として、全身の循環と健康を、いつの間にか阻害していたりする。


これは、意外と、なかなか本人だけでは、気づけなかったりするものなのです。


とにかくそういうことと格闘し続けていた2024年でしたが、いろいろあった中で、いつの間にか、その感情の血栓も、「あれ?」と思ったときには、消えてなくなっていたこともあった。そんな不思議な変化にも恵まれた1年でも、ありました。


そんな、少し、何かが変わったというきっかけを得られた気がする今、何かを変えてみようと考えています。


何かがあって、「自然に変わった」部分は、けっこう小さくて、ただのきっかけにすぎない。だから、それをきっかけにして、意図的に、能動的に、「変える」努力をしなければならない。そうしなければ、大きくは変わっていかない。しかしうまくすれば、その小さなきっかけをテコにして、大きな変化を手にすることができるかもしれない。


ここでその努力をしなければ、間違いなくこの店は閉店となる。しょせん、そこまでの店に過ぎなかった、で、ゲームオーバーとなる。これは確実と思いました。もちろん変える努力をしたところで、結果がどうなるかはわかりませんが。


そう考えていた、2024年の暮れでした。



ところで、これをお読みくださっている皆様に、誤解なきようお伝えしておきたいことがあります。


それは、「もっとたくさん、当店を利用してください」とお願いしているわけでも、そうしてほしいと考えているわけでも、ないということです。


店(側の都合)の売上のために、お客様に「もっとお金を使ってくれることをお願いする」というのは、筋違いで、明らかに間違っているというのが、私の考えです。


お客様というのは、今、お客様のペースでご利用くださってくれているだけで、店にとっては、充分にありがたいものなのです。たとえそれが、数か月に一度、半年に一度、一年に一度、という頻度であっても。お客様にとって価値のない店であれば、一年に一度であったって、利用はされないはずです。どんな頻度であろうと、店を利用してくださる限り、それは店の存在価値を見出してくれている、ということであり、それである限り、店主としては、それ以上に望むこと、要求することなど、ないのです。全てのお客様に、感謝しています。


だから、問題なのは、「新しいお客様を、どうやって、増やすことができるか。」

私の、この努力だけの問題です。

文脈上、上の話は、「リピート利用してくださっているお客様に向けて」のお話です。


新しいお客様を、どうやって、増やすことができるか。


これは、「今、現状で支持してくださっているお客様の期待に、どう応え続けるか」という課題と、時に、二律背反を起こす課題ともいえます。


というのは、(飲食業界では)よくある話として、お客の数を無差別に増やそうとするあまり、客層が乱れて、空間が乱れて、その結果、当初から本来の形で純粋に支持してくれていたお客様が離れていく、という展開があるからです。


ただ、私の場合、そのリスクを、過大に見積もりすぎていたのかもしれません。そうならないための防護壁を、あまりにも厚く厳重に、張り巡らせすぎていた感はあります。


もっとも、それをやっていたおかげで、「あの城は、それくらいの頑固城主が守っている城だ」というポジショニングを築き上げることができた、という側面もあるのかもしれません。最初から無防備だったときに、どれだけ「とんかつカンティーヌ的でない、異世界からの侵入」を許すことになってしまったかは、開業1年目に私自身が思い知ったことです。コロナ後、リニューアルする際に、防護壁を厚くしようと考えたのは、その反動にほかなりませんでした。


その反動が、論理というよりは感情によるものが大きかったということ、それを冷静に感覚的に捉えられるようになってきたことが、2024年、追い詰められたことの収穫でした。


防護壁は、どうやら、これほどまでに厚くしておく必要はなさそうだ。ここまで一旦やってきておけば、今後もそうやすやすとは、異世界からの侵入は起こらないだろう。

それよりは、今こそ本気で、新しいお客様の数を、増やさねばならない。


防護壁は必要です。でなければ、こういう個人店、特に一人でやっているような店、というのは、簡単に「客に振り回されてばかりいる店」になってしまうものなのです。多くの個人店の店主は、そういう思いをしています。しかしそれは、自分が毅然として防護壁を築いていないためです。そういう意味で、必要なものです。店はあくまで、店主がコントロールできる範囲に置いておかなければいけないものなのです。そしてそれこそが、「当初から本来の形で純粋に支持してくれていたお客様」を守ることに、他ならないのです。



だから、とんかつカンティーヌゆめみるこぶたは、とんかつカンティーヌゆめみるこぶたであることを変えません。しかし同時に、とんかつカンティーヌゆめみるこぶたとして、変わっていくつもりです。


もしかしたらあと数か月かもしれない命の中で、とんかつカンティーヌゆめみるこぶたがどうなっていくのか。

私の最後の挑戦が始まります。


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