(つづき)
そんなわけで、私の頭の中は、「奇(く)しくも訪れた、この千載一遇のチャンス!」となっていました。
物件視察以来、ちょっとおしゃれ系なカフェとかあったら、この街けっこういいんじゃないかな…と、ずっと思っていました。
そしてとんかつカンティーヌが少しずつ地域から受け入れられるようになってきてから、「今後の展開としては、やっぱりカフェは、ありそうだよな…」と構想を練っていたのです。
さらに実は、とんかつカンティーヌの開業前、内装工事が完了して、引き渡されたとき、
「この空間でカフェやってみたいなー」と思っていました。とんかつ屋始める前から(笑)。
HPの「コンセプト」ページに記載があるのですが、私はもともと、カフェが好きな人間です。
自宅でもない、職場でもない、それとは違う第三の「自分の時間を過ごせる場所」として、カフェという空間はとても好きでして、
それがとんかつカンティーヌのコンセプト、
空間はカフェ、
使い方は食堂、
体験はレストラン。
へとつながっていたのです。
本来、ビジネスモデルとしてカフェは、ファミリー層では使いづらく(需要が少なく)、1~2人客、それもわりと身軽に動ける人、でなければあまりターゲットにならない、という特性があることは承知していたのですが、
それでも今、期せずしてこれだけの条件がそろったならば、試してみない手はない!どちらにしても、期間限定だし!
ということで、決めました。
それにもうひとつ、
デリ業態時に、けっこうサンドイッチ商品類の評判がよくて、
「いつかサンドイッチ専門店とか、やってみたいな…」
とか考えていた部分も、あったのです(多すぎ)。
サンドイッチは、手軽で、どこでも誰でも好きなように作って楽しめるものである一方、
本当に完成度を高めようとすると、「料理」として細かく構成を考える必要がある、という、なかなか面白いものでもあります。
パンがあって、具材がある。まずはその相性。比率。
そして具材のそれぞれの、食材の相性、食感の相性、塩加減のバランス、水分のバランス、まとめ役のソース的なもの、など、さまざまなものをきちんと理由と根拠をもって構成することで、一体感が生まれ、ひとつの「料理」になる。
お皿の上の「料理」が、ひとまとめになって詰め込まれているようなものです。これは、厳密にいうと、けっこう技術や知識が必要なものです。
そういうふうにサンドイッチを考えると、なかなか面白そうなものができそうなアイデアがあったので、
「カフェ」といっても飲み物メインの喫茶店スタイルではなく、フランスのカフェのように食事をできる場でもあり、そしてその食事のメインとして、サンドイッチ専門店、でもいいかな、と、考えました。
さらに、デリ業態では難しかった、スイーツ類。とんかつカンティーヌ時代は、スイーツを目的に来てくださるお客様がいて(!)、それがとてもうれしかった。とんかつ屋に戻す前でも、これはできるな、やりたいな、と思っていました。
とんかつカンティーヌは、とんかつ(だけ)の店ではなく、その「体験」の全てを付加価値として感じてもらえるよう、心を砕いていたつもりです。つまりコンセプトの「体験はレストラン。」ということです。
お金を払って店を出るときに、「なんだか、ちょっとしたレストランででも食事したみたいな気分になったねー」と思ってもらえること。これを、大切にしていました。
そのために、目に見えるところ、見えないところ、ともすれば気づかれもしないようなところ、そういうところに、いろいろと仕掛けをこらしていました。こういうのは、ガストロノミーの世界で修業してきた者であればこその、ノウハウです。
デリ業態になってからいらしてくださるようになったお客様のほうが、カンティーヌ時代からのお客様よりも、比率的には、はるかに多くなりました。つまり店内でお食事をされた経験のある方は、かなり少ないのです。
とりあえずカフェ業態という形で店内飲食を再開することで、そのカンティーヌ的体験の提供も、少しずつ始めていくことができる。知ってもらうことができる。これは、2年のブランクが空いてしまった私にとっても、よいリハビリになりそうでした。
そういった考えで、デリ業態の終了後、“café Kobuta”は、オープンしたのです。
(つづく)
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