
日本の食文化
この文化を大切にしたいです
お箸の持ち方や、使い方のマナー。
お膳の基本的な配置。
ご飯と、汁物と、主菜、副菜からなる、献立。
季節の細かな移り変わりとともに立ち現われ消えてゆく、旬の食材。
自然の摂理とともに生き、巡り循環してきた暮らし。
古来より伝わってきた日本の食生活のあり方を、とても美しいと思います。
私はフランス料理の世界でずっと修業してきたので、もともとは、ナイフやフォークを使って食べるという料理が、当たり前のものでした。
しかし、フランスでの修行中、現地でのナイフやフォークの文化に接している中で、ある時つい、こう思ってしまった状況が、あったのです。
「なんて、野蛮に見える食べ方なんだろう」…と。
それはやはり、箸の文化で育った、日本人だったからなんだろうと思います。
フランスでフォークの文化が一般的になった(貴族の間で)のは、17世紀くらいのことで、それ以前は手づかみで食べていました。そしてナイフは、サーベル(西洋刀剣)のようなものでした。
大昔の狩猟採集の時代、とらえた獲物を丸焼きにし、石のナイフでぶった切って、木の枝を刺してかぶりつく、という食べ方の延長にあるようなイメージが、そのとき、私の中に浮かんでしまったのです。
日本の料理は、調理の時点から、箸で食べることを前提にして、食材の切り方などが決まっています。だから我々は、目の前にある料理を、すべて箸で食べることができるのです。
食べるという日常の行為に中にさえ、大昔から求められてきた美意識…。
もちろん日本の箸の文化も、大陸側からもたらされたものなんでしょうけれども。
そして私は、独立して自分の店を出すとしたら、箸で食べることができる料理を出したい、と考えるようになりました。それに、一汁三菜というバランスのとれた日本の食事の基本も、守りたい。やはりその形があってこそ、日本人が「ちゃんとした食事をした」という食後の感覚を持てるものだと、思ったのです。
そうして、とんかつカンティーヌの料理の姿に、たどりつきました。
とんかつカンティーヌには、日本の食文化を大事にしようと意図してある要素が、いろいろとちりばめられてあります。なにかの拍子に、ふっと気が付いていただけたら、うれしいです。
